「お月見どろぼう」という習わしがあるのをご存知でしょうか。
「泥棒」と言うとマイナスの響きですがとられた家は、怒るどころか縁起が良いと喜ぶのが特徴のお月見泥棒。どのような風習なのでしょうか。
こちらでは子どもたちが家々を回ってお菓子をもらう、和製番ハロウィンとも言える風習、お月見どろぼうについてご紹介しましょう。
中秋の名月の風習
日本の江戸時代から見られる習わしである中秋の名月のお月見どろぼう。
縁側や庭に誂えた月見台の上に供えられた月見団子を子どもたちがこっそりとっていくと言うものです。
長い棒で月見団子をついてとっていく子が多かったので、地域によっては「団子ぬすみ」や「団子どろぼう」などの呼び名で行われていました。
だいぶ廃れた風習ですが、今でも東海地方の一部で行われています。
子どもたちのことを「月の使い」と見立てて、お供え物をたくさん食べてもらうと豊作に結びつき縁起が良いと考えられ、お月見どろぼうにお供え物を食べられた家は喜ぶのです。
中秋の名月のお供え物
お月見泥棒が狙う中秋の名月のお供え物とはどういったものなのでしょうか。
昔は月の満ち欠けに寄って暦や農作業の動向が決められていました。
月を信仰しているため、米粉などで作られたお月見団子と稲穂に見立てられたススキが一般的です。
他にも、中秋の名月は「芋名月」という別名があり、芋の収穫祝いも行われるため、お月見には里芋やさつまいも、旬のくだものや秋の七草などがお供えされています。
現代のお月見どろぼう
現在は縁側のある大地が減少し、防犯上の観点から勝手に庭や敷地に入ることもできなくなったため、少子化の問題も含め様々な事情で廃れてきています。
しかし、地域交流の観点から、保育施設や小学校のPTAを中心に現代にマッチした方法でお月見どろぼうを復活させている地域もあるのです。
「盗む」ではなく、たくさんお菓子を玄関先や庭先に用意しておき、「おつきみどろぼうさん おひとつどうぞ」と張り紙をしておくと子どもたちが持参した袋にお菓子を入れていくという方法です。
「おつきみどろぼうです」「おつきみください」と声をかけて子どもたちがお菓子をもらっていくさまはさながら和製ハロウィンの様です。
仮装はしませんが、地域で子どもたちを育てていくという考え方につながるのではないでしょうか。