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ご存じですか?「こどものまち」ドイツのミニ・ミュンヘン日本版

今年の春休みの期間中、東京都豊島区において、子どもたちだけで運営する特別な「こどものまち」が7日間限定で開かれました。
この取り組みは、ドイツの「ミニ・ミュンヘン」をヒントに、子ども向けの工作教室を企画・運営しているさかたともえさん(51歳)が10年前に始めたものです。
この「まち」は、単に大人がいないという点だけではなく、子どもたちが自らの手で社会を体験し、学べる場としての魅力を持っています。
(※2025年5月25日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

ドイツ発の「子どものまち」から学ぶ社会体験、さかたさんの原点とは

「ミニ・ミュンヘン」は、1979年に国際児童年を記念してドイツで誕生した取り組みです。
子どもたちはこの中で、働いてお金を得たり、税金を納めたり、選挙に参加したりするなど、現実の社会を模した活動を体験します。
こうして子どもたちの手で一つの“まち”が形成されていくのです。
開催時期は夏の約3週間で、原則として参加できるのは7~15歳の子どもたちに限られています。
日本でも、この取り組みに影響を受けた団体が各地で「こどものまち」を実施しています。
さかたともえさんが「ミニ・ミュンヘン」の存在を知ったのは2014年、知人の紹介がきっかけでした。当時、子ども向けの工作教室を始めたばかりでしたが、公民館などで活動すると、周囲の大人からあまり歓迎されない雰囲気を感じることもあったそうです。

子どもが主役のまちづくり、平等なスタートを大切に

「学校以外で、子どもが中心となる場所といえば児童館くらい。もっと自由に遊べる、子どもだけの空間があってもいいのではないか」
と、さかたともえさんは感じていたそうです。
その想いを確かめるため、小学生だった長女と次女を連れて実際にドイツ・ミュンヘンを訪れました。
そこでは議会やタクシー会社といった施設が存在し、建物の設計もコンペで決定するなど、本格的な仕組みに驚かされたと言います。
そして何よりも、「市民」として参加した娘たちが目を輝かせながら、夢中になって活動していた姿が印象的だったそうです。
帰国後、すぐにプレイベントを実施し、2015年から本格的に「こどものまち」を立ち上げました。
「限られた子どもだけが得をするような上下関係は作りたくない」
との考えから、全体の運営や準備は大人が担い、まちに訪れたすべての子どもが平等に「市民」として活動できる仕組みにしています。

子ども同士で育む力「こどものまち」が教えてくれること

初めて参加する子どもたちは戸惑うこともありますが、何度も参加している子がさりげなく助ける場面がよく見られます。
大人の手を借りるのではなく、子ども同士で学び合い、支え合う関係性を築いていくことが、この「こどものまち」の理想です。
しかし最近では、「自分で判断するより、大人の許可を求める」ような受け身の子どもが増えていると、主催者のさかたともえさんは感じています。
特にコロナ禍以降、その傾向が顕著だそうです。以前は、十数人いた「自ら仕事を作る起業家タイプ」の子も、ここ数年では数人に減少し、何も始められないまま帰ってしまう子も少なくありません。
「普段、大人の指示や許可に慣れてしまっている分、自由な環境に戸惑うのかもしれません。だからこそ、学校や家庭ではできないことに挑戦できるこの場所を、もっと楽しんでほしい」
と、さかたさんは語ります。
実は、さかたさんの長男で中学2年生の坂田絆(ばん)さん(13歳)も、このまちの常連参加者です。
小学1年生の頃から関わり続け、
「まるで小さな社会のようで面白い」
と感じているそうです。
学校ではあまり多くを話さず、人間関係に難しさを感じたこともありましたが、この「こどものまち」では、議会の進行役を務めたり、小さな子の声に耳を傾けて助言したりと、積極的な姿が見られます。
年齢の違う子どもたちが集うこの場所は、学校とは異なり、序列もなく、和やかな雰囲気が広がっています。
「学校にいるときの自分と、ここにいるときの自分はまるで別人です。いろんな考えに触れられて、新しい発見もたくさんあって、すごく楽しいんです」
と、絆さんは笑顔で語ってくれました。

「第3の居場所」を目指して。こどものまちが子どもに与える安心の空間

「こどものまち」に参加した子どもの中には、不登校や学校生活にうまくなじめない子もいます。
主催者のさかたともえさんのもとには、そうした子どもたちの保護者から「ここでは安心して過ごせるようです」といった感謝の手紙が、毎年のように届くそうです。
さかたさんは、
「学校や家庭でつまずいてしまっても、きっとどこかに自分に合った居場所があるはずです。そんな子どもたちにこそ、しがらみのない『こどものまち』でのびのびと過ごして、少しずつ成長してもらえることを願っています」
と語ります。
この「こどものまち」は、今後も春休みの時期に継続して開催していく予定です。

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